皆さんは魚が好きですか?タンパク質やビタミンを多く含み食卓に並ぶことも多い魚ですが、今世界で食べられている魚の半分は養殖なんです!
その残り半分の天然魚については年々減少しており、生態系への影響が懸念されています。それを食い止める主な手段として養殖が注目されており、今後もその数は増えていくと予想されています。
今回はそんな今注目の養殖漁業について解説します。
<目次>
- 養殖とは
- メリット
- デメリット
- 養殖の問題点
- サステナブルな取り組み
養殖とは
養殖とは生簀の中で魚を育て出荷するものですが、大きく2種類に分けられます。「蓄養」と呼ばれる稚魚から育てるものと、「養殖」と呼ばれる卵から孵化させた魚を育てるものがあり、それらを総称して養殖といいます。
また、「養殖」の中には養殖魚の卵を育てるサイクルが確立した「完全養殖」と呼ばれるものもあります。
メリット
養殖のメリット
- いつでも旬の魚を味わえる
- 生態系を崩さない
- 個体差が少ない
- より高品質な系統のみ育てられる
- 必要な分だけ高品質な水産物を生産・販売
- 寄生虫がいない
いつでも旬の魚を味わえる
養殖の大きなメリットの1つとして、いつでも旬の魚というのがあります。冷凍・保存技術が発達した今でも、やはり取れたてで鮮度の良い魚の重要があります。
生態系を崩さない
自然界の魚の獲りすぎによる生態系への影響が懸念されており、それが漁獲量の規制等に繋がっていますが、養殖にはその心配がありません。また、世界で獲れる魚のうち40%を占めている目的外の魚を取ってしまう混獲も、養殖にはありません。
個体差が少ない
養殖は同じ餌を食べて育つため、魚の大きさにあまり差が生まれません。自然界のものには育った環境やエサで大きく差があるので、同じサバでも味が結構違うことがありますが、それを防ぐことができます。
より高品質な系統のみ育てられる
卵から育てているところは、より身の引き締まった高品質な魚の卵を選んで育てることができるので、それを繰り返すことにより、より高品質な魚を育てることができます。
必要な分だけ高品質な水産物を生産・販売
自然界のものだけですと年によって漁獲量がばらつくので、値段や供給量に大きく差が生まれます。また数年周期で漁獲量が減る年などもあるので、その点養殖では事前に量を増やすなど、安定した供給に繋がります。
寄生虫がいない
自然界の魚に比べ、養殖魚に寄生虫がいる確率は非常に低いです。これは魚のエサが関係しており、自然界の魚に寄生していることがあるアニサキスなどの誤食による食中毒も防ぐことができます。
デメリット
養殖のデメリット
- 莫大なエサ代
- 生け簀の管理費
- 養殖場周辺の海域に悪影響を及ぼす恐れがある
- 密集しているため病気が蔓延しやすい
莫大なエサ代
養殖漁業にかかる経費の50%以上が魚のエサ代と言われています。特にマグロでは70%近くを占めると言われています。
生け簀の管理費
また生簀の維持・管理にも大きなお金がかかります。もし破損すると生簀の修復費用だけでなく中の魚も逃げてしまうため、生簀の維持管理は欠かせません。また維持管理を徹底していたとしても、台風や津波などで破損していまうこともあります。
養殖場周辺の海域に悪影響を及ぼす恐れがある
養殖用の餌の食べカスや糞などが周辺海域に漏れ出るため、周辺海域の環境汚染や生態系破壊にも繋がりかねません。
密集しているため病気が蔓延しやすい
養殖魚の健康は管理されていますが、万が一病気の魚が混じると狭い生簀で密集しているため病気は一気に広がります。また病気対策に抗生剤などの薬を魚に注射している場合は、薬による人体への影響も懸念されています。
養殖が抱えるサステナブルの問題点
養殖漁業は一見自然界の生態系を守る上でサステナブルな事業に感じますが、1つ大きな問題点があります。それは養殖魚のエサに大量に魚粉を用いていることです。
サーモンでは同じ1キロですが、マグロに至ってはマグロ1kgに対して15倍の餌が必要になります。これはエネルギー変換効率の面からも良くありません。エネルギー変換効率とはエサのカロリー(エネルギー)に対しての生産物のカロリーです。マグロの場合はエサ15kgに対してマグロ1kgなので、エネルギー変換効率は7%未満と、現在低いと問題になっている牛や豚などの食肉よりもさらに低い数字です。
また、このエサとなる餌魚は海で獲れた魚を使います。つまり養殖業を拡大し生態系を守ろうとすればするほど、エサとなるイワシやニシンなどの乱獲につながってしまうのです。
サステナブルな取り組み
そんな養殖業界ではサスティナブルな養殖実現への取り組みも始まっています。
ノルウェーに本社があるスクレッティング社では「脱魚粉化」を掲げ、従来よりも魚粉の少ないエサの開発・販売を行なっています。
他にも養殖魚のエサとなるタンパク質を魚から他の生き物へと変更する取り組みもあり、そこには今昆虫食で注目されてる昆虫も含まれています。
昆虫バイオベンチャーMUSCAではイエバエの幼虫を魚の飼料にする取り組みを行なっています。
まとめ
サステナブルから考える養殖漁業、いかがでしたでしょうか。天然水産資源に頼りすぎない養殖漁業は、今後もその需要から市場が拡大していくでしょう。そしてその先には、現在の魚のエサに魚を使う時代が終わりを迎え、よりサステナブルな養殖業が発展していそうですね。
今後も養殖漁業からは目が離せませんね!
今回取り上げたスクレッティング社についてはこちらの記事をご覧ください。
今回取り上げたMUSCA社についてはこちらの記事をご覧ください。